銀次郎のはなし(出会い編)

 

 

銀次郎とは9年前に出会った。
私がねこ好きなのを知っていて
「バイト先の人が 子猫を持て余していて、困っている。
もしも余ったら保健所につれていくしかないかもしれないから、1匹いかが?」と友だちが声をかえてくれた。
家では反対されたけれど、父が「メスならいい」と譲ってくれて、いただくことにした。
最後に残っていたのはメスとオス1匹づつだった。
ところがもうひとりの人がメスでないならいらないと言い出し、それではオスが余ってしまう。。。
一度もらう気になってしまった私は父に、うちがもらわらないと保健所に連れてかれると脅して(!)めでたく我が家にねこがやってきたのだった。

雑種で野良だから器量が悪い猫を想像していた。本当にそうだった時に備えて名前も結構、ひどいものを考えていた。
初めて会ったのはそのバイト先の人が大学まで連れてきてくれた車の内だった。
小さくて車におびえて運転席の下にすぐ入ってしまう。一緒にいた特にねこの好きでない友だちと「かわいい〜」っと声を揃えたのを覚えている。
そのころのサイズは1升マスに完全に丸くなって寝れるくらいの小ささだった。
種類はキジトラの雑種といわれた。毛が少しグレーっぽくてそれが銀色みたいだったので「銀次郎」とした。

近所の友だちのねこ博士にキャリーを借りたのを持参していたので、電車に乗ってひとりで帰った。
ねこと本格的に触れあうのは初めてだったから、事前に本を読んだりして「ねこ切符」があることを知り
律儀に駅員さんにねこと一緒だと告げ、小さなかみ切れをバスケットの取っ手につけてもらった。
ちなみにねこ切符は子供料金で、特に自販機で販売はしていないからほとんどの人がそんなことしていないようだ。
きっと、その時の私は念願の子猫と一緒に電車に乗れるから、自分がねこを連れている事をアピールしたかったのだと思う。
でも車内ではニャーニャーうるさくて、周りの人はみんな私とバスケットを見てくるから
そんなことしなくても、全然みんなに知られていたし
うるさくして怒られるんじゃないかとヒヤヒヤだった。
たまにかわいい〜と覗き込んでくれる人がいたりすると、ほっとした。

家に着いて家族に紹介したら、みんな驚いていた。本当に連れてくるとは。。。
おじいちゃんなんて今さら「ねこなんて飼っちゃだめだよ〜」なんて言っていたし。
おばあちゃんはねこが嫌いだとその時知ったし、何だか家は別の問題が起こっていてその子はあまり歓迎されなかった。
仕方なく、ひとりでどうしていいかわからないまま、アンカをつけてあげたりいろ
いろした。
まだお互い緊張していたしていた。
遅くに帰った夜には私の部屋に閉じ込められていて、私の顔を見るなりそりゃニャーニャーうるさかった。
そして私のお腹の上に乗ってきて、何だか冷たいものをこすりつけてくる。
てっきり舐められているのかと思ったら、湿った鼻をつけていたのだった。
本によるとねこ同士は挨拶で鼻をつけるのだという。そして人間にもそれをやると。
そういうものの一種なのかな、、、なんて勝手に銀次郎の行動を解釈したり、しばらくそんな感じでお互いぎこちなく過ごした。

そして予防接種でもしようと病院に連れて行った時の事。
人間みたいに注射の前は熱を計るのだけれど、ねこ(動物)はおしりから体温計を入れる。
ふつうに、測定していたら先生が「ていうか、この子、女の子だから」とさらりと言ってきた。
????????
そんなはずは!!!と聞き返しても「いや、女の子です」という。
ではもうひとりの人がオスをもらっていたということ?
どうやらバイト先の人が間違えたらしい。
銀次郎をくれるときも「お姉ちゃんと引き離すのがかわいいそうだった。。。」と話していたから、きっと本当に気付かないままもらわれて行ったのだ。
急いでその友だちに電話した。ちょうどバイト先にいてねこの里親も一緒だった。一連の話をしたらそりゃぁ、みんな驚いていた。
当然、もうひとりの人は知っているのだろか?という話になる。その人は金沢に引っ越してしまい、連絡をとっている人は誰もいなくねこの行方は不明のまま。
メスでなくちゃいらないと言ってオスを飼っているその人。オスと気付いても大切にしてくれている事を願うばかりだ。

期せずしてメスねこを手に入れられた我が家は、大家族+ねこという構図とも馴染んでなかなか上手くやっている。
最初は苦手だったおばあちゃんもかわいがってくれるし、みんなが銀次郎に一目置く事で家族が円満になった気がした。
今は実家を出た私がここで飼っているので、旅行に行く時など預ける程度。
銀次郎としてはあちこち連れ回されて迷惑だろうけれど、実家の人はたまに銀次郎と過ごすのはまんざらでもないようだ。
ちなみに女の子と分かって名前を変えるか考えたが、呼び慣れているし、今さら女の子風な名前も女の子としては少々厳しい目をしている彼女に似合わないので
このまま「銀次郎」でいくことにし、たいていは「銀ちゃん」と呼ばれている。
でも今やみんな適当に「銀の助」とか「ぎんこ」とかなぜか「ざぶ次郎」とか自由に読んでいるので名前なんて、何でもいいのかもしれない。

ねこというより銀次郎のいる暮らし。これは言葉に尽くせない喜びがたくさんあり、逸話もたくさん。
とりあえず「銀次郎」との出会いをお話して、その話はまた次回に。。。